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恋の行方を探してください【完結】
第42章 【四十二話】『恋の行方』の行方
 由臣の意外にも真面目な一面を見て、ドキリと心臓が音を立てた。
 そのことが信じられなくて、美哉は首をまた振ると、立ち上がった。

「それでは、とっとと済ませましょう!」

 外へ出ると、川村がすでに待ってくれていた。
 車に乗り込み、由臣の指示で日下部物産へと向かった。

「いきなり行って、会ってくれるんですか?」
「それは向こうの気分次第だろう」
「アポ取るとかしないんですか」
「電話で話すのも嫌だ。仕事じゃなければ、絶対に行かないくらい、嫌いだ」

 そう言うと、由臣は美哉の手首を掴んできた。やはり指先が氷のように冷たかった。それで由臣が緊張していることがよく分かった。

 車はそれほどせずに、日下部物産へと到着した。正面玄関前に車を止めてもらい、由臣と美哉は降りた。

「川村、終わったら連絡を入れるから、どこかで休憩してこい」
「かしこまりました」

 そういうと、川村はすぐに車を移動させた。
 美哉は車が去っていくのを見届けると、由臣に引っ張られて日下部物産の建物へ入った。

 受付で名乗り、日下部綺華に会いたいと告げれば、あっさりと通されて、拍子抜けした。日下部綺華は日下部物産の役員らしく、最上階に部屋を持っているということだった。由臣と美哉は、指定された部屋へと向かった。

「……それにしても、大きな会社ですね」
「会社の規模に対して、見栄を張りすぎだろ。しかもフロア一階分、日下部綺華の部屋とか、おかしいとしか思えないな」

 会社の規模と言われても、美哉からすれば美哉が務めていた会社と比べれば、自社ビルを持っている日下部物産は充分に大きいし、すごいと思う。規模からいっても、雲泥の差だ。

「別におかしいとは思いませんけど」

 美哉の反論に、由臣からは特になにも返ってこなかった。

 二人は長い廊下を歩き、一番奥へと向かった。一際、豪華な扉の前に到達する前に扉が開いたかと思ったら、なにかが飛んできた。驚いて美哉は足を止めたが、由臣は止めることなく進み、投げられた物を、空いていた手で受け取った。

「用事は済んだ」
「えっ」
「帰るぞ」
「ほんっと、いい挨拶ね。それ、つまんなかったから、返すわ」
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