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甘えた
第10章 10
ペンキ騒動以来、結愛花への嫌がらせ攻撃は落ち着いて、最近では長谷川くんが一人で歩く姿を見かけるようにもなった。といってもトイレに行く時くらいだけど。

週が明けた日、長谷川くんが一人の時を狙って話しかけた。


「なんだ久保か…」


彼女の幼馴染であるあたしに愛想を振りまけとは言わないけど、憂いのある瞳でニコリともしない。この男、無表情。                                      
単刀直入に切り出す。

「莉壱から付き合ってるって聞いたと思うけど、あれ偽装だから…」

「そうなのか?」

無表情と同じで抑揚の無い声。驚きも落胆もしていない。
付き合ってるなんて本気で思ってないよね?結愛花のためって分かってるよね?

「そうだけど」

「くすっ」

え?今、笑った?揶揄ったの?あたしを試してた?
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