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甘えた
第11章 11
玄関ドアを開け、

「莉壱ー来たよー」

ズカズカとあがりこんで行く。
キッチンから漂う匂いに誘われて覗き込むと、莉壱が汗をかきながら鍋で野菜を炒めている。

「都羽、この暑さなんとかして…」

「何作ってるの?」

材料を見るとカレーかな。

「カレー」

「すごいね。全部一人でやったの?」

「これくらい出来るよ。キャンプで作ったことあるし」

流し台に肉厚な野菜の皮が散らばっている。

あまりの可愛さにぎゅーっと飛び付きたかったが、灼熱地獄のキッチンで汗だくの莉壱には、くっ付きたくなかった。

「莉壱、これは?」

作業台の上に置いてあるレトルトのカレーを指さした。

「カレールーでしょ?」

やばいっ。可愛すぎるっ。頭の良い莉壱がレトルトとルーの違いが分からないなんて…

「いいえ」

「えっ!違うの?」

「これはお湯で温めるレトルトだよ?」

「あーーっ。いっぱいあってどれだか分からなかった」

目を覆いながら、ついでに汗を拭っている。しくじったという素振りは珍しい。
分かります。最初は誰だってそうです。

「あたしが交換してもらいに行ってくるよ。レシートある?」
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