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甘えた
第2章 02
ゆっくりと近づいて来た爽やか男子はあたしのそばにしゃがみ込む。

「都羽ちゃん、昨日はおつかれ」

声を聞くまでわからなかった…

ケンジだ。

光政が漫画を閉じ、あたしの背後に忍び寄り聞き耳を立てている。

「おつかれー」

割り切った関係って納得してもらっているが、彼氏面されるんじゃないかと、ちょっと警戒。

「昨日は都羽ちゃんに吸い取られ過ぎて枯れちゃったよぉ。あははっ。しばらく女はいいかな?……受験勉強に専念することにした」

最後の台詞は頭をぽりぽりと掻きながら話す。

背後でごくりと生唾を飲む音が聞こえる。

「あはははっ。それは何よりです」

「冗談……なんかパワーもらった気がする。まだどこに向かうか分かんないけど、とりあえずやる気が出た。受験が終わるまでここには来ないよ」

「すごい意気込みだね。試験当日まで持続させなよ?ふふふ」

「ふふふ。じゃ、帰るね。それだけ伝えたかった」

ケンジの視線が動いた、あたしもその先を追って振り向いた。

「光政……どーしたの?!顔が真っ赤だよ?」

立派な浪人生へと進化したケンジを見送ると再び問題集と格闘する。

その後、光政は呼び出され慌ただしく車でどこかへ出掛けてしまった。

7時10分前になると結愛花も家に帰っていった様子。

長谷川くんや結愛花と話をするわけでもなく、なんでここに居るんだろう…

謎だ。

車で送るという申し出を断り、40分かけて家までの道のりをジョギングしながら帰った。
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