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甘えた
第15章 15
《明日 実家においで》

昨日、莉壱の部屋から帰ってきたばっかりなのに。

《引っ越し終わったの?》

《俺の荷物を引き払っただけだからね》

自分のベッドの上でゴロゴロしながら莉壱とメッセージのやり取りをする。
特にラブラブ感も無く今までと変わらないやり取りだけど、あたしの文面は敬語じゃなくなった。
莉壱に対して完全に打ち解けた証拠だ。




実家がある新しい到着駅へは所要時間はそんなに変わらないが1本乗り換えが増えた。

メトロの改札を出たところで莉壱が笑顔で出迎えてくれる。初めての待ち合わせに、照れくさくてニヤケてしまう。やば…

ほんの20日前は学校のそばで笑顔で走り寄って来た莉壱に苦笑いを返していたというのに。

あの時のあたしに『莉壱の笑顔は本物だよ』と教えてあげたい。けど、あの時のあたしは聞く耳を持たなかっただろう。

莉壱の色んな姿を見て、好きになったんだから、一連の出来事がなければ『一度きり』って割り切っていたと思う。

「俺に会えて嬉しそうだね」

手を繋ぐついでに耳元で囁かれる。

「そんなことないけど?」

口元を緩め、肩を莉壱に押し付けた。
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