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貴方の心と身体を癒してさしあげます
第2章 愁子×沙羅 - 桜の散る頃に

「話さないといけないわね…」

ぽつりと愁子の口が開く。
しかし私に言うでもなく独り言のように語っていく。

「この別荘は私の祖父の物でした。両親も主人もこの別荘のことは知りません。私と祖父と…彼との秘密の隠れ家でした…祖父は一代である財閥を作り上げ、それを父が引き継ぎ、一人娘の私は父が認める男性と結婚することに…そこに愛などありません。ただ権力が欲しい夫と跡継ぎを生むだけの私…。男の子2人に恵まれて私の役目は終わりました。子育ても私の思うようには行かず、次第に私の居場所はなくなって…それでも私はよかった。たた1人、愛する人がいましたから…彼を思うことで必死に耐えて来れたんです」

そこで一旦話を切って、桜を眺める愁子の顔は懐かしさと寂しを兼ね合わせた表情だった。

「今から…30数年前…祖父に連れられて初めてこの別荘に来た時でした…そう、この前のあなたのように、この桜を見上げる青年がいたんです」

『この桜が気に入りました?』

私がその方に声を掛けると、その方はにっこり微笑んでこう言いました。

『ええ。とても。この桜を私のキャンパスに映し出したい』

その方は日本中を放浪している画家でした。
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