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第2章 愁子×沙羅　－　桜の散る頃に

「ああ…僕は君に名前を呼ばれることを夢見ていたよ…一度も君を忘れた日はなかった」

私は両手で口を押さえて、声を押し殺して泣く。
本当はいっぱい話したいことがあるのに涙しかでてこない。

「愁子…抱きしめてもいいだろうか？」

彼が少し緊張した様子で聞いてくる。
私はもちろん頷いて彼に抱きしめられた。
その瞬間に今までの全ての記憶がよみがえってくる。
楽しかったとこ、うれしかったこと、かなしかったこと…全ての思いが蘇り、押し殺して泣いていた声が音になって響き渡る。

「わあああああっ…。会いたかった…ヒクッ…真咲さん…お会いしたかった…わあああああっ」

私を抱きしめる腕に力がこもる。

「僕もだよ…ずっと会いたかった…こうして触れて愛し合いたかった」

「…真咲さん…ヒクッ…抱いてください…私を…ヒクッ…愛してください」

私は30年前に伝えた言葉と同じ言葉を彼に告げる。

「ええ…もう離なさい…愁子は私のもの」