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暁の星と月
第6章 その花のもとにて
暁は、再び目を逸らす。
遥か彼方の春霞を帯びた田園風景を、見るともなく眺めながらぽつりと呟く。
「…怖いんだ…」
「怖い…?何がですか?」
「…愛していると言った途端、春馬さんが僕の前から消えてゆくような気がして…怖くて口に出せない…」
暁のしっとりとした漆黒の闇のような黒い瞳が怯えたように、瞬かれる。
小さな頃から暁が大切にするものは悉くその小さな手から奪われ続けてきた。
…学校、友達、安心できる家、そして母親…
だから、愛していると呟くことで神から情け容赦なく奪われるような気がするのだ。
「…それに…春馬さんにとって、僕がずっと側にいることが幸せとはやはり思えない…」
暁はゆっくりと月城を見つめた。
「…春馬さんは前途洋々たる弁護士だ。僕との関係が明らかになったら彼の将来はない。…春馬さんは、真剣に僕を愛してくれている。…全てを棄ててもいいとまで言ってくれている。…でも…あんなにも輝かしい将来がある彼にそんなことを言わせてしまう自分が情けない…。
…僕にそんな価値はないのに…。春馬さんに申し訳ない…僕に出逢わなければ、彼には別の人生があったのに…。…そういつも堂々巡りをしてしまうんだ…。
…だから苦しい…。愛しているけれど、苦しい…。だから、愛していると言えないんだ…」
黒い宝石にも似た暁の瞳から水晶の欠片のような涙が一筋溢れた。

…それを見た瞬間、月城の胸は耐え難いほど痛み、気がつくと目の前の美しく人知れず傷ついている青年の肩を引き寄せ、その胸に強く抱きしめていた。
「月城…」
腕の中で、暁が息を詰める。
「…苦しまないでください…。暁様…。貴方は優しすぎる。…大紋様は、貴方以外に大切なものなどないのです。…貴方はお幸せにならなくてはなりません。どうか…どうか苦しまずに、お幸せを掴んでください」
「…月城…」
見上げた暁の涙に濡れた頬を月城の長く美しい指が優しく触れる。
「…こんなにもお美しい方を手に入れられるのならば…何を犠牲にしても本望でしょう…大紋様はお覚悟を決めておられる筈です」
暁はその貌に仄かな笑みを浮かべる。
「…褒め過ぎだ…」
…でも…と、小さく呟く。
「ありがとう…。…なんだか少し気が楽になった…」
無垢な笑顔に見惚れていると、ふと余りに距離が近いことに気づく。
月城は自分が暁を抱きしめていることに初めて気づき、慌てて身体を離した。


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