この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
暁の星と月
第7章 愛と哀しみの円舞曲
「…何があったのですか…?」
暁は押し黙る。
膝を抱え、遥か彼方の景色を見るともなしに見る。
暫くして、遠慮勝ちに…しかし気遣わし気な声が聞こえた。
「…失礼を承知で申し上げます。…大紋様が西坊城子爵令嬢とのご婚約を発表されたと伺いました」
上流階級の世界は広いようで狭い。
若く美男子で敏腕な弁護士と、美しい子爵令嬢との婚約話はあっという間に広がったのだろう。

「そうだよ。…春馬さんは婚約した。結婚式も来月だ。
…僕たちは別れた。男同士の恋愛なんて、いつまでも続くものじゃない。いい潮時だったのさ。…春馬さんは女性を愛することができるし、とても良い縁談だ。
…別れるなら早いほうがいい。だから綺麗さっぱり別れた。…それだけの話だ」
敢えて軽く言い捨てる。

暫く間があり、月城が静かに口を開いた。
「…嘘ですね…貴方は嘘を吐くのが下手だ」
眉を顰め、暁が月城を見上げる。
「…なぜ嘘と決めつける⁈」
「貴方の表情で分かります。…とても哀しそうな…苦しそうな表情をされている。…それに…あんなにも切なげに大紋様への想いを語られていた貴方が、そう簡単にお別れになるはずはない…」
「…」
「なぜ、お別れになったのですか?…あんなにも貴方を熱愛されておられた大紋様からお別れを言い出されるはずがない。
…何があったのですか?」
暁は堪りかねて月城を睨むように見上げた。
「君になにが分かる⁈…男しか愛せない僕の気持ちが分かるか⁈…結婚することも、子供を儲けることも、恋人だと公表することもできない…許されない…ずっと世間から隠れるように生きなくてはならない…そんな僕の気持ちが分かるのか⁈」
「…暁様…」
暁の陶器のように白い頬に涙が流れる。
「…恋人に…そんな惨めな思いをさせなくてはならない…そんな僕の気持ちが…分かる訳がない…!
…僕は、春馬さんの将来を台無しにする訳にはいかない…好きだから…愛しているから…彼を不幸にする訳にはいかないんだ!」
「…暁様は…それでよろしいのですか?」
月城の声は聞いたことがないほどに苦しげだった。
「…僕はいいんだ…。僕は幸せになろうなんて思っていない…春馬さんが幸せになってくれたらそれでいい…それに…」
暁は哀しいまでに綺麗な貌で笑った。
「…僕には兄さんがいる…」
子供の頃に戻ったような眼差しで続ける。
「…兄さんさえいれば…生きていける…」

/479ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ