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暁の星と月
第7章 愛と哀しみの円舞曲
月城はゆっくりとその美しい手を暁の頬に伸ばした。
暁の透明な涙をその手で愛おしむように払い、それから、まるで身体の内から溢れ出た情動に押されたかのように、暁を強く抱き締めた。
「…お辛いのに、無理に笑われなくてもよろしいのですよ…」
「…月城…?」
「貴方は昔から、そうだ。…辛抱強くて…健気で…いつも寂しそうで…。
貴方こそ…お幸せにならなくてはならないのに…!」
月城の胸は兄、礼也のように温かく…水仙の薫りは彼の傷ついた心を慰めた。
「…月城…」
「私は、貴方にお幸せになっていただきたい。誰よりも。…貴方の涙は見たくない。…なぜだかわからないけれど、胸が締め付けられそうになるのです…」
月城が暁を更に強く抱き締める。
暁は引き寄せられるように、その胸に縋る。
「…君の胸は温かいな…」
「…暁様…」
暁は一度、ぎゅっと子供のように月城に抱きつくと、ゆっくりと…少し残念そうに笑いながら身体を離す。
「…人に見られたら、誤解されるから…」
「構いません。誤解したい人には誤解させたら良いのです!」
むきになって怒る月城に驚き、暁は小さく吹き出す。
「…君は面白いな…意外に怒りっぽいし…」
「暁様…!私は…」
暁は穏やかに笑う。
「…ありがとう、月城…。笑ったのは久しぶりだ」
…春馬さんと別れてから、感情を失くしていた…。
笑うことなんて、もうないと思っていた。
大紋を失った悲しみは簡単に癒えはしないけれど、まだ自分が笑えると分かった…。

咳払いしながら、眼鏡を押し上げる月城を見る。
「…僕も、聞いてもいいか?」
「はい。何なりと…」
「…君は、梨央さんのことをもう忘れられたのか?」
…月城が梨央のことをずっと密かに愛していたことを知っている暁は、梨央が礼也との婚約を解消し、腹違いの姉との恋を選んだことをどう思っているのか…
それが気がかりだったのだ。
月城は、暁の隣に腰を下ろすと遠くを見つめた。
「…忘れることはありません。…梨央様は私の初恋ですから…。縣様とご婚約された時も、綾香様との恋を成就された時も、同じように胸は痛みました。
…けれど…」
月城は暁を振り返る。
「…私は、梨央様がお幸せならば、それでいいと思えるようになったのです」
そして
「…暁様も…きっといつかはそのようなお気持ちになられるのではと思います…」
真摯な優しい眼で笑ったのだった。






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