この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
暁の星と月
第7章 愛と哀しみの円舞曲
「…そうか…それは良かったね…」
奥の落ち着いた席に大紋を案内する。
美しい所作で椅子に腰掛けながら、温かみのある眼差しで、暁を見て微笑う。
「それで暁もギャルソンの格好なのか」
「…予想以上にお客様に来ていただいて、手が足りなくて…恥ずかしいので、あんまり見ないでください…」
俯く暁に、そっと告げる。
「…いや、良く似合う…。
…相変わらず、君は綺麗だ…」
密やかだが熱い言葉が、聞こえた。
…綺麗だよ、暁…。
愛している…。

いつも閨で囁かれた低い囁き声と全く変わらない…。
暁は堪らずに貌を背け、呟くように言った。
「…やめてください…。僕たちはもうそういう関係じゃないんですから…」
「…暁…僕は君を…」
大紋の言葉を素早く遮る。
真っ直ぐに眼を見て、はっきりと告げる。
「…春馬さん、ご婚約おめでとうございます」
ずっと練習していた言葉だ。
予想はしていたけれど、やはり胸が締め付けられるように痛い。
「…暁…」
「…絢子さんと、どうぞ末長くお幸せに…」
大紋の貌が苦しげに歪む。
そんな貌を見たくなくて、暁はにっこり微笑む。
「…今、メニューをお持ちします。ごゆっくりしていらしてください」
何か言いたげな眼差しの大紋に一礼し、メニューを取りに受付に戻る。
呼吸を整えて、メニューの準備をしているところに再びドアのベルが鳴る。
「いらっしゃいませ」
華やかな色彩が眼を打つ。
「暁様!お久しぶり!」
黒い鐔の広い帽子、色鮮やかな真紅のドレスに身を包んだ雪子が笑いながら入ってきたのだ。
暁は眼を見張る。
「雪子さん!いつ英国からお帰りに?」
雪子は両手を広げ、暁に抱きつくと西洋式に抱擁し、頬にキスをした。
華やかな美女が美男子のギャルソンにキスをしたので、店内が一斉に騒めいた。

「昨日よ。ご機嫌いかが?暁様。…相変わらずお美しいわね」
「…雪子さんこそ…一層、お美しくなられましたね」
お世辞でなく、そう思う。
雪子は英国で水を得た魚のように生き生きしているらしい。
「ありがとう、お陰様で毎日楽しいわ。…暁様に振られたお陰ね」
嫌味っぽくなくあっさり笑う。
何と答えようかと口籠っていると、雪子が振り返り、ドアの方に声をかける。

「あら、何をご遠慮なさっているの?お入りになって。
…絢子さん」
ドアがゆっくりと開く。

…暁はメニューを取り落とした。
/479ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ