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暁の星と月
第9章 ここではない何処かへ
「…暁…」
苦しげな眼差し…見たこともないような複雑な哀しみを帯びた大紋の表情がそこにはあった。
「…春馬さんは、もうすぐお父様になるのですよね…」
敢えて淡々とした口調で話し始める。
「…暁…」
「…春馬さんならきっと、優しい良いお父様になられるはずです…」
…きっとそうだ。
子どもの誕生だって、楽しみにしていたはずだ…。
だって…さっきの引き攣った貌で分かる…。
この苦しげな表情で分かる…。
…春馬さんのことなら何でも…手に取るように分かる…。
…だって…
僕が…誰よりも…誰よりも…愛した人だから…。

暁は込み上げる想いを押し殺し、静かに微笑う。
「…僕のことは忘れて…幸せなご家庭を築かれてください…」
大紋は激しく首を振る。
「嫌だ…嫌だ…!…僕は…僕は君を愛している!…絢子には…子どもには…できるだけの償いをする…!…だから…!」
暁の腕を引き寄せようとする大紋の手を振り払う。
「…愛していても…どうにもならないことはあります!…決して…結ばれない運命も…」
暁の白い花のような美しい貌に再び、涙が伝う。
「…もし、僕とどこかに逃げて、僕と二人で暮らし始めても…春馬さんはきっと、苦しむ…。
貴方が見捨ててしまった奥様と…お子様のことを…きっと生涯、苦しんで…罪悪感を感じられて生きていかれるのです…」
「…暁!」
暁は流れる涙を拭おうともせずに、美しい瞳でひたすらに大紋を見つめた。
「…僕には分かります。…貴方は…優しい人だから…優しすぎる人だから…きっと…ずっと苦しむ…!そんな貴方を僕は見たくない…。
春馬さんの大切なお子様から、お父様を取り上げたくない…!…だから…僕のことは今日限り、忘れてください…!お願いです…!」
言い放った暁は大紋に背を向ける。

ややもして、暁の背中に大紋の震える低い声が響いた。
「…暁…僕は…君を苦しめることしか、できなかったな…」
はっと見上げた大紋の目に光るものを見つけ、暁は必死で首を振る。
「そんなことない…僕は…幸せでした…。…貴方に愛されて…幸せでした…」
「…暁…!」
「…貴方に愛された美しい記憶を僕は生涯、忘れません。だから…このまま、お別れしましょう…。
…お互い美しい想い出だけを胸に…。
貴方との間に醜い思いを、僕は残したくないのです…」

…大紋はこの、夜に咲く白く美しく儚げな花のような青年を見つめ返した。
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