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サイレントエモーショナルサマー
第30章 bacio
夕刻に向かう街は変わらず行き交う人々で混雑している。気を抜けば簡単に肩同士がぶつかりそうな程の混雑なのに藤くんはその街の中を私を気遣いながらスムーズに進んでいく。
この後、彼はどうするつもりなのだろう。タイムリミットまではまだ余裕がある。藤くんの部屋に行きたい。だが、今日私が彼の部屋に行けば、また今夜から彼に寂しい思いをさせることになる。
「……家、連れてってもいいですか」
言い出すべきか悩んでいると藤くんは足を止めてぽつりと言った。気づけば駅前まで戻ってきている。
「いいの?出来ないし、帰らなきゃだよ」
「出来なくても、ふたりきりになりたい。ホテルとかじゃなくて、俺の部屋がいいっていうのは俺の我侭です。志保さんが嫌じゃなければ来てほしい」
イエスと答えるかわりに小さく頷く。藤くんはにこりと笑ってほっと息を吐く。
プラネタリウムが綺麗だったとか、キーホルダーはなににつけようとかと話しながら20分ほど電車に乗って藤くんのアパートへ向かった。すっかり覚えた帰り道。夕暮れに染まっていく空の美しさを見やりながら外階段を上がる。
いつでも、藤くんの部屋は気持ちの落ち着く匂いがする。居室に上がってソファーに座ると彼はアイスコーヒーを出してくれた。
だが、折角出してくれたアイスコーヒーには手をつける暇もなく、私はソファーに座った藤くんの足の上に乗せられ、後ろから抱き締められている。
「やっと触れる」
「…ちょいちょい触ってたよ」
「あんなんじゃ足りない」
かぷりと首筋に噛みついて服の上から乳房を掴む。途端にぞくりとして甘ったるい声を出せば、耳の中に、かわいい、の声。
すんすんと鼻を鳴らしながら私の身体を弄って、私の尻の下の彼のモノはむくむくと大きさを増していく。だから今日は出来ないと言っているのに。これ以上興奮してたまるかともがけば、またかぷりと首筋を噛まれる。