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サイレントエモーショナルサマー
第31章 istinto

少し話をして前に3人で行った洋食屋のオムライスを食べに行くことにした。ちびちびとお冷を飲みながらミヤコちゃんから受け取ったばかりのチラシをテーブルの上に広げて藤くんに見せる。

「あのね…えっと、ミヤコちゃんから花火大会誘われてね…それが今週の土曜なんだよね。で、その…浴衣のレンタルとかもあって…行きたいなと思ってるんだけども」
「いいですね。俺も行きたい。津田とふたりで行くんですか?」
「ううん、何人か誘うって言ってたけど、」
「俺も行きます」
「あ、ああ、そ、そう…」
「なんですか、その反応」
「いや…土曜は俺の日って言うかと…」
「俺も一緒に行けば、俺の日も同然でしょ」
「そうだけど…」

さてはこいつ他に何か企んでるな。しれっと言ってお冷のグラスに口をつけ、スマホを取り出している。誰かにメッセージを送っているらしい。それを見ていると私の視線に気づいてまだロックのかかっていない画面を私の方へ差し出す。

ミヤコちゃんに、俺も浴衣で行きたいとメッセージを送信したところだった。間もなくぴこんと吹き出しが動き、予約を増やしてやるからフラペチーノを奢れとの返事が表示される。

「後でHP一緒に見ましょうね。志保さんの浴衣楽しみです」
「……私も、藤くんのちゃんとした浴衣ちょっと見てみたい」
「ちょっとじゃなくて存分に目に焼き付けてください。なんなら写真撮って待ち受けでもいいですよ。俺は志保さんを待ち受けにします」
「うん、そこまでは結構です」

藤くんには花見のときの私を盗撮した前科がある。勢いに押され水を飲み干すと同時にサラダとオムライスがやってくる。和風ドレッシングをサラダにかければ藤くんはなににも手をつけず私の顔を凝視している。

「どした?冷めないうちに食べよ」
「………」

今度はなんだ。口をへの字に曲げで不満げである。藤くんがなにを考えているのか少しずつ分かってきているつもりだったのだが、この表情はなにを意味しているのかよく分からない。
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