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サイレントエモーショナルサマー
第32章 scintilla

おずおずと巾着からスマホを取り出して藤くんに手渡す。いいこ、と頬にキスをして自分の持っていた巾着にそれを押し込む。

手を繋ぎ直して色々と買い込みながらミヤコちゃんたち3人と再び合流した。流石に3人が居る前では手は繋がないものの藤くんは私にぴたりと張り付いて離れようとしない。

ミヤコちゃんおすすめの穴場スポットは河川敷から10分ほど歩いた先にある神社の境内だという。喧噪を逃れ静まり返った道を歩くが、顔を赤くした東さんの声が辺りに響き渡る。彼がタクトのように振り回すリンゴ飴は落っことしたのかひびが入っているのが見えた。

「いい時間ですね。この辺座って食べながら見ましょ」

石段を上り、しんと静かな神社の境内でミヤコちゃんが言う。この石段のてっぺんからだと花火が綺麗に見られるらしい。

端から香川さん、東さんと座った。真ん中にミヤコちゃんで、それから藤くん、私と続く。それぞれが出店で買って来た飲み物や食べ物を分け合ったりして少しずつ食べ始めた頃に、ぴゅうっと乾いた音が鳴った。

刹那、轟音と共に暗くなった空が色鮮やかに染まる。円形に広がる色とりどりの煌めきに思わず息を呑んだ。

きれい、と呟くと藤くんの左手がそっと太腿に触れる。静かに彼の方を向いてから右手を重ねた。指を絡めて、私の太腿と彼の太腿の間にその手を隠して。体温を感じながら初めて直に見る花火の美しさに見惚れた。

「あー首疲れた。つか酒欲しくね?香川、ちょっと買ってきて」
「…東さん飲みにきたんすか?」
「いや、津田が来いっていうから」
「言ってませんよ。村澤さんに声かけたら東さんが俺も行きたいって言ったんじゃないですか。しかも勝手に香川さん連れてくるし」
「津田まじかわいくねー。つーか村澤さんと森、消えてんじゃん。おい、藤、酒買ってきて」
「今さらですか?てか、俺さっきリンゴ飴買ったんですけど」

打ち上げから僅か10分で飽きた東さん、いや、もうこいつは東でいいや。年下だし。彼は空を見上げ続けて首が痛いのかさすりながら言う。まだ顔には赤みが残っている。呆れ声の香川さんと強気なミヤコちゃんが言えば東の白羽の矢は藤くんに突き刺さる。だが、藤くんはその矢を抜き捨てて、俺は断固動かないのポーズである。
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