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サイレントエモーショナルサマー
第32章 scintilla
「……んな顔すんなよ」
「ひ、浩志が悪い…」
顔が熱くてたまらない。浩志とのキスはなんだか変な感じになる。とろけるような快感なんてないのに、つい、もう1回とねだりたくなる。
下唇を噛んで俯くとシャワーを止めるように言われた。なるべく浩志の顔を見ないようにしながらシャワーを止めてヘッドを戻すと濡れたティッシュペーパーが足の裏に触れる。
ぴりりと痛み。消毒液を沁みこませていたのか。眉を顰めると薄らと笑って、もう終わるから、と言う。その優しい微笑みは私の胸を高鳴らせた。
両足の裏に大きな絆創膏を貼って手当てを終えた浩志の腕がこちらへ伸びてくる。何事かと身体を強張らせるとそっと頭を撫でられた。ほっとすると横向きに抱き上げられる。藤くんとは違う浩志の匂いがふわりと鼻腔を擽った。
リビングへ向かい私の身体をソファーに下ろすと浩志はデニムの後ろポケットからスマホを取り出してどこかに電話をかけ始めた。首を傾げてそれを見ていると彼は私の隣に腰を下ろしながら手招きをする。おずおずと僅かな距離を詰めると腰を抱かれた。熱い、身体。太い、腕。
「ああ、藤か。俺だけど。都筑、連れて帰ったから他の奴らには上手いこと言っとけ。じゃあな」
ぎょっと目を見開いて浩志の顔を見上げる。にやりと笑って一方的に通話を切断するとぽいとスマホを放り出す。
「…これ、藤がやったのか」
ぐいと強く浴衣の襟を引かれた。うなじに浩志の指が触れる。ぞくりとして逃げようとすると腰に回った腕にぐっと力が入った。
「……そ、そうです」
「あの野郎…お前も流されてんじゃねえよ。我慢できねえのか」
「が、我慢したよ…でも、なんていうか…藤くんに見つめられると弱いっていうか…」
「ほんっとにどうしようもねえ女だな」
呆れ混じりに言ったかと思うとぬるりとしたものがうなじに触れた。浩志に舐められてる!まさか!浩志がこんなことするなんて。途端に身体中がぞくぞくし始めて、慌てて浩志の空いた腕に手を伸ばすとあっさり捕獲され、指は彼の指に絡め取られた。