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サイレントエモーショナルサマー
第34章 psicologia

悪戦苦闘してなんとか10個の型に生地を流し込んだ。1個だけちょっと生地が足りないが、まあいいだろう。どきどきしながらオーブンに入れ、チカの指示通りの温度と時間でスイッチオン。ふう、と息を吐くと白ワインのグラスが差し出される。

「焦げないかな」
「うちのオーブンを舐めてもらったら困るね」

受け取ったグラスに口をつけ、野沢菜の漬物をつまむ。ほう、確かに意外と相性が良い。もぐもぐと咀嚼しながら『彼が喜ぶお弁当レシピ♫』とかいうお気楽なタイトルの雑誌を捲る。週刊誌の3分の1程度の厚さで900円越えはぼったくりだ。

「こんなもんまで買ってきちゃって。いじらしいねぇ、志保ちゃん」
「…たまたまレジの近くの棚にあったから」

並んだレジ脇の棚にこんなものを陳列していたスーパーが悪いのだ。ふん、と息を吐いて乱暴に白ワインを流し込む。にやにや笑いのチカがおかわりを注いでくれた。

「なに作るか決まってんの?あんた買って来たの卵と鶏肉だったけど…」
「…卵焼きとから揚げ?」
「焦げてない卵焼き作ったことあったっけ?」
「ないね」
「…とりあえずから揚げの下処理してから寝ようか」

軽く溜息を吐きながらもチカは楽しげである。昨晩は私が世話になっている分の食費やら何やらを渡すと、多すぎる!と口を尖らせ、今朝もあんたはそういうとこが他人行儀だとややお怒りモードだったのだが、私がカップケーキと弁当に挑むのが面白くて仕方ないのだろう。

チカに見守られながらから揚げの下味をつけて冷蔵庫に押し込んだと同時にカップケーキが焼き上がった。高級オーブンとチカの指示は素晴らしい。ホットケーキを丸焦げにする私が久方ぶりに焦げていない食べ物を作り上げることが出来た。

「…出来た」
「その顔、見てるのが私ってのがなぁ…かわいいよ、志保。女の子みたい」

かしゃり、とシャッター音。はっとカップケーキを見ていた視線をチカにやるとにやにや笑いでスマホを私に向けていた。
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