この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
サイレントエモーショナルサマー
第35章 astuto

優しく抱き寄せられ、藤くんのシャツの胸元に額を擦りつけた。ふわりと広がる女物の香水の匂い。気分が悪くなる。強く彼の胸を押して距離を取ると不思議そうな顔で私の顔を覗き込んでくる。

「志保さん?」
「……藤くん、変な匂いする」

小さく言って逃げれば、彼は自分のシャツの胸元を引いてすんすんと鼻を鳴らした。よく分からないように首を傾げている。

「しないですよ。ね、こっち来て」
「嫌だ」

再度、私を抱き締めようとした腕から逃げると彼は眉尻を下げ寂しそうな顔になった。

「俺は、中原さんとちょっと消えたり、男に絡まれてる志保さん見て嫌な気持ちになりました。それに俺も志保さん不足なんですよ。触れさせて、抱き締めさせてください」
「……でも、変な匂いするから嫌だ」
「じゃあ、家帰ってシャワー浴びたら触っていいですか?」
「シャワー浴びて戻ってくるの?」
「志保さんを連れて帰ります」
「…浩志が怒る」
「中原さんは部長に捕まって飲まされてるんで。このチャンス逃すわけにはいきません」

ずるいなぁ、とごちるとにこりと笑って頬にキスをしてくる。ふわりと鼻先をかすめる嫌な匂い。藤くんの匂いじゃない。ここ数日、成瀬ちゃんや浩志によって掻き立てられていた奇妙な胸のざわつきよりも、何倍も暗い感情が湧きあがる。

浩志に対する後ろめたさが全くないわけではなかった。でも、それ以上に藤くんからいつもの気持ちの落ち着く匂いがしないことが嫌で嫌で堪らない。

唇を噛み締めてこくりと頷く。藤くんがほっと息を吐いたのが分かった。ふと見れば彼の足元には鞄が置いてある。最初から私を連れ帰るつもりで抜けて来たのか。やっぱり藤くんはずるい。
/586ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ