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サイレントエモーショナルサマー
第36章 pavida
彼の言葉から察するに本来ならばきちんと待ち合わせをした上でコスプレを買いに行く一日を想定していたようだ。諸々の条件が重なって結果的にフライングして私を連れ帰ったというのに眠っている間に彼になにがあったのだろう。
「どうしたの、藤くん」
最早、どうしたのと問うのも何度目か分からない。こうなったら挑発してやる。肩を抱く腕から離れ、彼の太腿の上に跨った。首に腕を回して、口づける。下唇を噛んでから顔を少し離して、じっと目を見つめた。
「言いたいことあるなら言って。藤くんがなんか変だと調子狂うよ」
いつだって余裕たっぷりの彼が嘘のようだ。押し黙る姿はいつも通り美しいが、どこか暗く荒んで見える。
結局、藤くんはなにも語らず、私も話が出来ぬまま夜20時頃に彼の家を後にすることになった。