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サイレントエモーショナルサマー
第36章 pavida
インターフォンを鳴らすが、応答がない。迷惑だったか。コンビニの袋をドアノブにひっかけてその場を後にしようとすると鍵の開く音がする。
「……なんで来たんだよ」
「心配だから。どうせなんも食べてないでしょ」
「友達が見てなくても粥が作れるようになったのか」
「あっためるだけのやつ買って来た。あと、ほら切ってあるリンゴも。最近のコンビニって凄いよね」
顔色はあまり良くないものの、毒づく余裕はあるらしい。がしがしと髪をかきながら部屋へ戻っていく浩志に続いて私も部屋に上がった。
浩志は酷くかったるそうにソファーに沈んだ。近寄って額に触れるとかなり熱い。
「移るからあんまり近寄るな」
「はいはい。お粥、あっためるね。食べて、薬飲んで寝てください」
そう言ってキッチンへ向かった。買って来たスポーツドリンクやゼリーなどを冷蔵庫にしまってからパウチの粥を温める。時折、げほげほと咳込むのが聞こえてくる。
「病院、行ったの?」
「こんなもん寝てれば治る」
温めた粥のお椀と共に彼の元へ戻り、隣に腰かけた。テーブルに放り出された煙草とライターに目がいく。風邪を引いているときの煙草は不思議と美味しくない。灰皿が空ということは彼は昨日から吸っていないのだろう。
「昨日も寝てたの?」
「……昨日、昼過ぎに目ぇ覚めたら部長の家のリビングに転がされてた」
「あらら…部長にお持ち帰りされちゃったわけね」
「お前、大丈夫だったのか。あのなんか変な男に絡まれてたろ」
「うん、大丈夫」
どうやら浩志の体調不良の原因は部長が彼をぞんざいに扱った為らしい。全くなんて人だ。詳しく聞くとその部長は半裸で廊下に転がっていたらしいが。