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飼っていたペットに飼われています。
第8章 捕食(サキ目線)
 いま思えば所々にヒントはあったんだ。

 乾いていく彼の髪が、真っ黒ではなく深い緑色が混ざっていることや尖った爪。それから、マスクの下にあった整った唇の中にある、鋭い牙のような歯と、その奥にある…何か大きな違和感。
 捕えるように私を見つめる瞳は綺麗だけどなんだか少し怖くて。

 それなのに吸い寄せられるように何故か目が離せなかった。
 日本人離れしている整った容姿から海外の血が入ったモデルさんなのかもしれないなぁと、納得付けてその全てを片付けてしまっていた。

 きっと他の人には退屈であろう、よくあるペットの話を嬉しそうに聞いたあと彼は問う。
「いなくなった前の日の夜、本当に君を食べようとしていたんだったらどうする?」
「多分、小さい頃してたみたいに甘噛みしようとしてただけなんだと思います。でも…、もしあの時私を食べたかったなら、それでもよかったのになって思うんです。居なくなっちゃうくらいならいっそ食べられていればよかったって。」
「ふふ…、すごいね。彼、怒って出ていったなら、次に戻ってきたときには本当に食べられちゃうかもよ?」
「私を食べに戻ってきてくれるなら、喜んで身体のどこでも差し出しますよ!」
 ぱっと腕を広げる私を見て、彼は下を向いてくくっ…と笑った。その優しい目を見ながら、やっぱり何処かであったことがある気がしていた。勢いで家にあげてしまったけれど、この人は悪い人じゃない。そう思ってた。
 侑斗くんからの電話を切って、振り返るまで。

「…彼氏?」
「いえ、まだ…。え?」
 音もなくピタリと後ろに立っていた彼を見上げると、それまでの優し気な雰囲気は消えていた。その目はまるで、捕食者のようにギラついていて思わず後ずさりしてしまう。
 背中に壁が当たってもう逃げられない。
 体が震えるのを感じながら、あの晩胸の上から自分を見下ろしていたあの瞳と一致していることに気がつく。
 もしかして、もしかして…。

 近づいてきた彼の口の中には見慣れた青い舌があった。
「久しぶりだね?」
 あぁ…、やっぱり…。

「………スイ?」
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