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コーストライン
第6章 ga ra su da ma

パウダールームを出たところで、会計を済ませ店を出ようとしていた叶和と視線が絡まる。
表情は表に出していないが、瞳から、つい最近叶和の職場であったときに見たイロを伺わさせていた。
その眼を見て、圭吾は無意識にもっと俺に興味を持てと笑みを作っていた。
叶和はその笑みを見て即座に視線を逸し、男と店を出ていった。
躰は欲を吐き出しスッキリしているのに対し、心には靄っとした感情が残る。
「おっ、まだ居たのか」
カウンターに戻ったとき、事務所から出てきた真に声をかけられた。
「もう帰るよ」
カウンターには氷の溶けたグラスが二つ残っており、圭吾は自分のグラスを手に取り、残りを飲み干す。
「一緒に帰るか」
「イヤ、大丈夫」
真は圭吾の隣に置いてあるグラスに目をやり、バーテンダーに会計は店につけとくように指示をして、ポンッと軽く圭吾の肩を小突き店を出て行く。
小突いたときに、圭吾のシャツから甘ったるい香水の香りが真の鼻をついたことは言わずに。
圭吾も帰り支度をして、スタッフに帰ることを告げ、女が戻ってくるのを待たず、店を出ていった。
さてと、店を出て圭吾は立ち止まり、左手を持ち上げ腕時計を見る。
終電に間に合いそうだ。
駅に向かって歩きだす。
スクランブル交差点の歩行者用信号機が点滅して青から赤に変わることを圭吾に伝えていた。
急げば渡れるだろうが、アルコールも飲んでいる、終電の時刻にはもう少しある。
圭吾は交差点で足を止め、信号が変わるのを待つ。
♪♪♪~♪♪♪~♪
シャツのポケットに入れたスマホが、人気のない夜の交差点に響いた。

