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第2章 裸体を絵描く不純なゲイ
 すると、Aがこう言った。

 「トイレットペーパー、切れているでしょう?」

 目の前のペーパーホルダーには、たしかに備え付けられていなかった。

 「えぇ、ないっすね」

 間を空けてからこう言う。

 「それじゃ拭けないから、トイレから出れないね。ハッハハッハ・・・・・・」

 あれ、Aは何で笑っているんだ?と思う。

 「A先生、何で笑ってるんですか?」
 「だって、面白いじゃない」

 よく分からないけども、とにかくトイレットペーパーを寄越せと思っていた。

◆3分後

 呆気にとられて居ると、トイレットペーパーを探してきてくれたのか、便所のドアの上から渡してくれた。
 こうして、俺は用を足して、ようやく出ることが出来た。

 「あぁ、ありがとうございます」

 Aがふと無表情になって、クロッキーで使用したパイプ椅子を片づけてゆく。
 何か機嫌が悪いので、何か俺はやらかしてしまったのかと反省していると、こう言われた。

 「あんた、馬鹿なんじゃないの?」

 そして、頭が真っ白になった。

 「えっ?」
 「もう、今日は帰ってよ。あたし早く寝ないと行けないから、明日出張デッサンがあるからね」

 パイプ椅子を片づけるのを手伝わなかったのが不味かったのだろうか?

 「そうですよねー、失礼しました」

 その後、俺はすぐに荷物をまとめて帰る。

 帰宅途中に、Aのあの普段見せない無表情が言いようのない怖さを連想させた。
 自宅のアパートに着いてから、荷物を玄関脇に置いて、洗濯機で今日の仕事着とクロッキーで使用したエプロンを洗う。
 風呂に入って、Aの顔がぼんやりと浮かび上がってくる。
 その後、何をするわけでもなく気づくと布団で眠っていた。

◆第2週目

 また、A絵画教室の日がやってきた。
 画材を専用の鞄に入れて自転車を街に向かって走らせてゆく。
 俺はAにどう顔を向ければいいか、少し悩んでいた。

ーー今日のレッスンが始まってゆく。

 「○○さん、お上手ですね~。××さんは、大分陰影の具合が宜しくなってきたようで」

 そして、俺の番が回ってくる。
 また、何か言われるのかなと不安に思っていると、案の定こう言われた。

 「あんた、何回言われたら分かるの?あんたが筆持ってるだけでイライラするわ」

 俺はさすがにその時カチンと来た。
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