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第6章 窓口に現れない寮母さん
◆Cとの出会い

 その痴話をBとしていた前日。

 「あんっ、ぁんっ、あんっ、ぁんっ」
 「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ」  

 背中に汗をかいて腰を振る私。バーテンの仕事はその日休みだった。

 Cは3ヶ月くらい前に、三宮駅前のパイ山で出会ったどっかの女子大の1年生だ。
 それから何度かその路上で弾き語りを聴かせている内に、どういうわけか付き合うようになった。
 
 私は彼女の下宿先のマンションに屯するようになり、夕飯を一緒に作ったり、寝たり、寝たり、寝たり。
 それがC、私の知っているC、いや全然知らない部分もあるはずのCだった。
 
 Cはこの日、確か午後に講義があったはずだが、こんなことを言っていた。

 「もう部屋に二人きりで居て。ずっと彰と一緒に閉じ込めて」

 それを聴いて、それは監禁ではないかと思ったが、監禁を自ら望んでいるCが居る。
 と、同時にやりたくてやりたくて仕方ない私が居るというのもあるけども、もう一つ理由がそこにあった。


◆傷をなめ合う二人

 当時の事件で被った痛恨の一撃を心の中で温め続ける悪趣味、それがこの5年ほどの私だった。
 目の前のCは、いわばリストカットすることに躊躇いの無いような10代の女。
 両親からの激しい抑圧によって、自身の苦しみを手首に表現するしかなかった。
 心のリストカットを長年続けてきたみたいな私と性別は違えど瓜二つだ。
 
 Cはこの日も私の前でウキウキと楽しそうに、目をキラキラさせながらはしゃいで居た。
 時々、拗ねて騒いで、挙句の果てにはケロッと元通りになってしまう単純さがあった。
 そして……。

 お互いに求め合う。
 お互いに求め合う。
 それは、必然だった。
 お互いの傷を、傷を、なめ合うために。

 「彰くん、好き、好き、好き……」
 
 リップグロスの付いたCの唇にフレンチ・キスをする。
 そして彼女はミミズのような傷が何本もある腕を私の首に絡ませた。

 「好きだ好きだ好きだ……」

 私も彼女の耳元でそう囁いていた。
 その後、ひとつふたつと服を脱がせて……。

 このマンションの一間に監禁されたC、そして監禁した?私。
 苺の模様が描かれたベッドの上でそれは今日も始まる。
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