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第1章 トレンチコートのおんな
Aと部屋に入ってドアを閉めた瞬間、振り返ってから思いっきり彼女を抱きしめた。0.1カラットの涙が再び彼女の頬をポロポロと流れ落ちてゆく。その後、3分ほどその体勢のまま抱きしめ続けていると、Aが俯いたままこう言った。
「もう滅茶苦茶にして」
やっぱりそれかよー★と思っている自分が居つつ、下半身だけは正直に違いなかった。ひたすら、ガンダム・ガンダム・ガンダムと心の中で念仏を唱えて落ち着かせようとしたが、目の前のAに点いてしまった火はもう止められない。
「Aさん、今夜だけだよ。その後は忘れてくれない?」
いや、忘れて欲しかったなら、最初からこんな所に来るべきでは無かったんだとその時、自身に思った。馬鹿野郎。
◆
シャワーで二人舐りあった後に、部屋の光を最小限にしてひたすら情事に励んだのだろうか?時計は0時45分を示している。
気づくと彼女は半分失神していたようなので、やはりガンダム・ガンダム・ガンダムと唱えるしかなかった。
・・・・・・いや、違う。バーで出会う前から恐らく「失神していた」に違いない。
ふたりは同じベッドで、この後寝た。しかしきっと、ふたり違う夢を見ながら。
◆翌日
明け方、気づくとAはすっかり笑顔を取り戻していた。しかし、私は胸糞悪い気持ちになりつつも、熊の出来た顔を鏡に映しながら、洗面所に備え付けられていた徳用カミソリで髭を剃る。
ふと、振り返るとドアの前に、身支度を終えたAが立っていた。
「健也くん、ずっと私と一緒に居てくれない?」
そうなるのは目に見えていた。それが女心というものに違いない。
「Aさん、昨日言いましたよね?『忘れてくれない?』って」
「・・・・・・。いやよ、わたしもう独りはいやなの」
素直な女だ。そう、それは痛いほど私にも分かった。そして、この特殊なAという女が心にぼんやりと棲みついてゆくようになっていることに気づく。これは不味い。
「あぁ、旦那さんって名前何って言うんでしたっけ?」
「Bよ。地元の政治家でもあるの」
どっかで聴いたことのある名前だ。駅前の選挙用掲示板に、ポスターが貼ってあった気がする。いや、確か・・・・・・。
◆
その後、Aと私は別々のタクシーを拾って、市街へ出て帰路へ着いた。別れ際、Aは安心したような顔をして手を振っていた。
「もう滅茶苦茶にして」
やっぱりそれかよー★と思っている自分が居つつ、下半身だけは正直に違いなかった。ひたすら、ガンダム・ガンダム・ガンダムと心の中で念仏を唱えて落ち着かせようとしたが、目の前のAに点いてしまった火はもう止められない。
「Aさん、今夜だけだよ。その後は忘れてくれない?」
いや、忘れて欲しかったなら、最初からこんな所に来るべきでは無かったんだとその時、自身に思った。馬鹿野郎。
◆
シャワーで二人舐りあった後に、部屋の光を最小限にしてひたすら情事に励んだのだろうか?時計は0時45分を示している。
気づくと彼女は半分失神していたようなので、やはりガンダム・ガンダム・ガンダムと唱えるしかなかった。
・・・・・・いや、違う。バーで出会う前から恐らく「失神していた」に違いない。
ふたりは同じベッドで、この後寝た。しかしきっと、ふたり違う夢を見ながら。
◆翌日
明け方、気づくとAはすっかり笑顔を取り戻していた。しかし、私は胸糞悪い気持ちになりつつも、熊の出来た顔を鏡に映しながら、洗面所に備え付けられていた徳用カミソリで髭を剃る。
ふと、振り返るとドアの前に、身支度を終えたAが立っていた。
「健也くん、ずっと私と一緒に居てくれない?」
そうなるのは目に見えていた。それが女心というものに違いない。
「Aさん、昨日言いましたよね?『忘れてくれない?』って」
「・・・・・・。いやよ、わたしもう独りはいやなの」
素直な女だ。そう、それは痛いほど私にも分かった。そして、この特殊なAという女が心にぼんやりと棲みついてゆくようになっていることに気づく。これは不味い。
「あぁ、旦那さんって名前何って言うんでしたっけ?」
「Bよ。地元の政治家でもあるの」
どっかで聴いたことのある名前だ。駅前の選挙用掲示板に、ポスターが貼ってあった気がする。いや、確か・・・・・・。
◆
その後、Aと私は別々のタクシーを拾って、市街へ出て帰路へ着いた。別れ際、Aは安心したような顔をして手を振っていた。