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真愛~美女と野獣より・孤独な王子と黄色い薔薇の物語~
第1章 孤独な王子
自分もいずれ愛のない結婚をすれば、両親のように妻とは理解し合えず、不幸なままかもしれない。もちろん、夫として未来の妻に誠意は尽くすつもりだが、愛情を持つことだけはできないような気がする。
三十目前で恋人も作らず、愛のない結婚はできないなどと理想論を掲げている自分は、十代の弟よりよほど現実を認識できていないのだろう。
それに、自分にはまだ他人に話せない秘密がある。
トーマスは寝間着代わりにしているTシャツの袖をおもむろに捲り上げた。エーデリンデの皇太子が真夏でもけして半袖を着ない理由について、本当のことを知っている者はごく限られている。
彼は自身の右腕を眺めた。右の手首には鋭利な刃物で斬りつけたような痕があった。
三十目前で恋人も作らず、愛のない結婚はできないなどと理想論を掲げている自分は、十代の弟よりよほど現実を認識できていないのだろう。
それに、自分にはまだ他人に話せない秘密がある。
トーマスは寝間着代わりにしているTシャツの袖をおもむろに捲り上げた。エーデリンデの皇太子が真夏でもけして半袖を着ない理由について、本当のことを知っている者はごく限られている。
彼は自身の右腕を眺めた。右の手首には鋭利な刃物で斬りつけたような痕があった。