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真愛~美女と野獣より・孤独な王子と黄色い薔薇の物語~
第1章 孤独な王子
「こちらこそ、毎度ありがとうございます」
ロザリナは明るい声音で恋人たちを送り出し、貰ったばかりのコインを財布に入れた。誰かを歓ばせるために始めたことだから、描き賃もたいしたものではない。無料で描いても良いほどだが、〝無料〟と看板を立てると、これがまた素人絵描きかと客が敬遠して来ない。なので、殆ど無料に近い値段で描くことにしていた。
その時、石畳の向かいに店を出している花屋のサイモンが手を振った。
「ローズ。ミモザが余ったんだが、良かったら貰ってくれるかい?」
「ありがとう、歓んで頂くわ、おじさん」
サイモンは五十ほどの気の良い花屋の主人だ。いつも同じ場所に露店を出しているから、顔見知りになって長い。
ロザリナは明るい声音で恋人たちを送り出し、貰ったばかりのコインを財布に入れた。誰かを歓ばせるために始めたことだから、描き賃もたいしたものではない。無料で描いても良いほどだが、〝無料〟と看板を立てると、これがまた素人絵描きかと客が敬遠して来ない。なので、殆ど無料に近い値段で描くことにしていた。
その時、石畳の向かいに店を出している花屋のサイモンが手を振った。
「ローズ。ミモザが余ったんだが、良かったら貰ってくれるかい?」
「ありがとう、歓んで頂くわ、おじさん」
サイモンは五十ほどの気の良い花屋の主人だ。いつも同じ場所に露店を出しているから、顔見知りになって長い。