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真愛~美女と野獣より・孤独な王子と黄色い薔薇の物語~
第1章 孤独な王子
「もちろん」


 勢い込んで、つい声が高くなった。まるで初恋を知ったばかりの少年のようで、これが二十八になる男とは思えない。


 少女は色鉛筆を手にして、彼を見つめている。真正面から見つめられ、トーマスはますます体熱が上昇するのを自覚した。


「色鉛筆で描くのか?」

「そうよ。これが私の宝物」

 少女は平たい缶箱に整然と納まった色鉛筆を持ち上げ、軽く振った。カラカラと軽やかな音が響いた。

「三十二色入りなのよ、私が中学生になった時、父が買ってくれたの」

「大切に使ってるんだね」


「そうね。とは言っても、父に買って貰った当時の鉛筆は一本もないわ。よく使ったから、どれも新しいのに何回も買い換えたのよ」
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