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キスをして
第5章 小塚の本領
「ところでカップル喫茶に興味が?」

「ないです掘り返さないで下さいよ。資料ページの横に書いてあったから読んでみただけなんです」

「行きたいとかじゃないんですね」

「行きたくないです」

「良かったぁ。間宮さんのあんな姿誰にも見せなくないからどうしようかと」

そんなに嬉しそうに言わなくても行かないわよ。
そもそもカップルじゃないんだから小塚さんが悩む事じゃないでしょ。
一体何を悩んでたんだ。

「でもちょっと妬けますね」

「私に?」

「どうしてそうなるんですか。僕以外にはハッキリ言い返すんだと思ってあまりムキになったりもしてくれないでしょう」

「言われたいんですか」

「あんな風に崩してくれて良いんですよ?」

「無理です」

あの人達は仕事の上司や後輩だけど徹夜仕事をするとなると一緒にいる時間が長いから仲が良くないと続かない。
だからこそ遠慮はせずに上下関係を気にしないようにと入社の頃に言われてきた。
遠慮して言い返さないと心配される。
でも小塚さんはプライベートな人だから簡単には崩せない。
小塚さんだって私に配慮しているからいつまでもそんな話し方なんじゃないのかな。

「無理ですか」

「無理ですよ。小塚さんはプライベートの人だから仕事の人みたいに毎日顔を会わせたり、誰かが間を取り持ったりしてくれるわけじゃないから修復出来ないかもしれない」

「それって僕には嫌われたくないって言っているのと同義ですか?」

「そういうわけではないですけどいつも居る人が急に居なくなったら寂しくなるかなと思ってるんです。それにそっちだって素の話し方してないですよね」

急にブレーキを掛け車を路肩に停める。

「お客様をプライベートにするのは僕にとっては一大事なんです。お客様でいようとしている人に本当は手を出すなんて良くないとは思ってるんです」
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