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第12章 9話　九段下啓

　その様子を外でみていた、あかりや他のスタッフは、驚きと感動で目を見開いていた。
　人が、生きたい、と願う気持ちが、聴いているすべての人に伝わるような、すばらしい歌声だった。
　四分ほどの曲を取り終え、録音の停止ボタンをエンジニアが押すと、スタジオのなかで大きな拍手が響き渡った。
「こんな歌、聞いたことないよ。俺も、明日から頑張って生きよう」
と言った声が、その場にいたスタッフから上がっていた。
　レコーディングでギターを担当していた、千歳山優はブースから出てきた啓に駆け寄り、手を握って
「啓さん、俺、感動しました。こんな曲のレコーディングを担当させてもらって、本当に光栄です」
と目を輝かせて啓に感想を伝えた。それを聞いた啓は、笑顔で
「ありがとう。優君のギターもとっても良かったよ」
と答えた。
「とんでもないっすよ」と返事をして優は顔を赤くした。