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快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体
第35章 兄を見過ごすワケにはいかない
兄は父親が異国の地で銃弾に倒れた事がショックだったらしい。
そして葬儀で初めて弟であるオレの姿を見て、動揺していたらしい。

兄は兄で、バイトをしながらギリギリの生活をして、学費も捻出していたという。

弟のオレが急に現れて、兄は父親の遺産をオレが受け継ぐものだと思い、ついカッとなってオレに冷たくあたったのだ、だからあの時の事を許して欲しいと懇願した。

「気持ちはわからないでもないが、だからといってそんな事であっという間に金を使い果たすなんておかしいだろ?それとこれは別問題だ!」

少し兄に同情したが、どうせ思いもよらない大金を手にして遊び呆けていたに違いない。

兄は沈んだ表現でポツリポツリと語り始めた。

「お前にはわかんないだろうな。何せほんの少しの間しか一緒に暮らしてないだろうからな。だけどオレはまだ小さい頃にオフクロと別れてオヤジに連れられ、それから18になるまで一緒に暮らしてきたんだ。
何度ケンカしたか覚えてないが、オレにとっては子供の頃、オヤジが慣れない手つきで飯を作ってくれたりしてなぁ…後からこんな事もあった、あんな事もあったなんて考えていたら少し自暴自棄になっていたせいか、もうどうにでもなれ、とばかりに金を湯水のように使い果たしてしまった。
解るか?金じゃないんだよ、どうやったらあの事を忘れられるか、アテもなくフラフラとさまよっているうちに少しでも気を紛らわしたかっただけなんだ。そして気がついたらこんな有り様だ…」

兄はオヤジの忌まわしい出来事を忘れたいがために1人でいるのがイヤで金を使い、憂さ晴らしをしていたのだという。

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