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快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体
第55章 マンションを売り飛ばす
鴨志田は達也の考えが読めなかった。

「となると、今住んでいるマンションも売却するという事ですね?」

「そうです。間取りは3LDK、築三年のマンションです。
新築のワンルームマンションと土地、それに今言ったマンション合わせてどのくらいになりますか?」

達也は平然と言ってのけた。

「失礼ですが、お客様は何故そこまでして売却を?」

不審に思ったのか、対応した男が達也に売却の理由を聞いた。

「実はお恥ずかしい話なんですが…母親が経営している会社がちょっと不振なもので…で、母親は同時に体調を崩して、私が後を継ぐ事になったのですが、何せ会社は赤字なもので、貧乏クジを引いたというか…まぁ、そんな事がありまして、だったらいっその事、売ってしまおうと。
我々のような小さな会社にはあのマンションは必要ありません。
それを売って、会社の運営資金として補おうと」

「成る程。でも、売却しても色々と後が大変ですよ。譲渡所得税の事もありますからね」

そんなものはどうとでもなる、問題なのは、買取りか仲介にするか。

買取りだと不動産が買い取るから素早く売れるが、不動産の言い値に従うしかない。

仲介だと買取りに比べ、高く売れるが、買い手が現れないまでは売れない。
しかも不動産から仲介手数料としていくらか引かれてしまう。

だが、達也の決断は早かった。

「解りました、買取りでお願いします。仲介だといつ売れるか解りませんし、私どもとしては1日でも早く売却したいものですから」

「左様でございますか。それならワンルームマンションと今現在お住まいになってる分譲マンションを弊社が買い取るとなると、このぐらいの額になりますね」

見積書に目を通した。

合計で約7千万だ。

やっぱり少ないな、達也は奥の手を使うしかないと思った。

「解りました、ではこの見積書を持ってもう一度私どもが検討してからお返事致しますので」

達也は見積書を手にし、店を出た。

車に乗り込み、開口一番鴨志田に伝えた。

「こっからは秘書であるアンタの出番だ。やり方は言わなくても解ってるよな?」

後部座席で足を組ながら、運転する鴨志田に伝えた。

バックミラーから見える達也の表情は薄ら笑いを浮かべていた。

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