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快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体
第85章 麻薬中毒者(ジャンキー)となって…

「もう1つ君に伝えなければならない事があるんだが」

「何ですか?」

「…実は会社が…つまりお兄さんが社長だった時に、あちこちに店舗を構えたのはいいんだが、どれもこれも業績が悪化して、今や大赤字で会社は倒産寸前なんだ」

会社が?

「それ、ホントなんですか?」

「…亮輔くん、私は君にウソはつかない。いくら私が社長になってその穴埋めをしようと努力したんだが…時すでに遅しで。
仕方なく民事再生法を申請して、大手のグループに吸収される形となってしまった。全く、あんな事さえなければ…」

あんな事っていうは兄の事だろう。
あのクズ、死んでも人に迷惑かけやがって!

「で、沢渡さんはどうなるんですか?」

「…まぁ私は社長としてあの会社にいたが、吸収されたら私はお払い箱だ…せいぜい何の意味もない肩書きの役員になるしかないだろう」

「…そうだったんですか」

「亮輔くん、すまない。君をサポートすると言いながらこんな結果になってしまうとは…」

沢渡さんはウソをついてるようには見えない。

「いえ、沢渡さんのせいではありません。悪いのは兄です!
やっぱりあんなクズはオレの手で消すべきだった…」

「…亮輔くん、とにかくお母さんが見つかったんだ。それでも良しと思わなきゃ」

「…はい」

その間は無言のまま、空港に着いた。

ロビーではオフクロの帰国を今か今かと待っていた。

「あの便かもしれない」

沢渡さんは窓の外に着陸しようとしている飛行機を指した。

あの便にオフクロが…

しばらく待っていると、車椅子姿の女性が何人かの警察に囲まれるようにして現れた。

…!あれがオフクロか?

オレは絶句した。

あの妖艶で豊満な肉体の面影は無く、痩せこけ、老婆のように変わり果ててしまった。

「オフクローっ!」

「社長!」

オレも沢渡さんもオフクロに声をかけたが、全く反応は無かった。

そのままオフクロは警察に身柄を拘束され衰弱しきった身体の治療が先決の為、救急車に乗せられて行った。

…あれがオフクロ?
ウソだろ?

オレは呆然と立ち尽くしていた。
隣で沢渡さんが目を潤ませ、ただオフクロが出ていった方向を見つめていた。

まさか、凜を廃人にしたオレに対する因果応報なのか。
それとも兄の怨念なのか。

また頭の中で兄の幻影が浮かび上がった…
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