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快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体
第110章 清濁併せ持った人間になりなさい
一体、母親とオーナーの間でどんな話をしていたのだろうか。

「千尋ちゃん、何であんな目に遭ったんだろ…しかも実の息子に…私の憧れの千尋ちゃんが…」

オーナーは母親が兄の策略によって海外に売り飛ばされ、クスリ漬けにされて灰人になった事を知っていた。
オレは母親の事は一切話してなかったが、人づてに聞いたのだろう。
オーナーは涙を流しながら、オレの頭を撫でた。

「亮輔くんはお母さんの治療費の為にここへ来たんでしょ?
アナタを一目見て、あの千尋ちゃんの子供だってすぐに解ったわ。これは千尋ちゃんの身に何かあったんだと。で、千尋ちゃんとの約束を果たす為にアナタをここに入れたってワケ…」

もしかして、母親は兄によって消される事を予想していたのだろうか。いや、そんなはずは無いだろう、万が一という仮定でオーナーに頼んだに違いない。

母親は麻薬患者の為の更正施設に入居したが、後遺症は残ったままで、認知症のように誰が誰だか解らず、自分の誕生日や年齢すらも覚えて無い状態だ。

元に戻る可能性は極めて低い。
だが、0じゃない。オレはその低い可能性を信じて、施設へ入居する為の費用を払い続けている。

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