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快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体
第139章 生きて一生苦しめ!
ナツは両手で包丁を持ち、構えた。
もうすぐだ、もうすぐであの世へ逝ける。
あの世で母親や鴨志田に会えるかな…
いや、会うのはあのクズの兄だろう。あの世で会ったら、思いっきりぶん殴ってやろう。

「早く刺せ!さぁ!オレを殺してくれ。オレは人殺しの弟だ!ナツ!何も考えずにそれをここに突き刺しゃいいんだよ」

ナツは包丁を持ちながら、手が震えていた。

「この、人殺しの弟…人殺しの弟…」
うわ言のように何度もその言葉を繰り返していた。

どのくらい時間が経ったのだろうか。
オレは左胸を差し出し、ナツは包丁を握ったまま、時間が過ぎていった。

「ねぇ、アンタのアニキは今何してるの?」

「姉ちゃんが亡くなった数日後に電車に轢かれて死んだよ…しかも肉の塊になって。無様な死に方だよ。バラバラになってな…出来ればオレが殺したかったのに…オレは姉ちゃんの墓を建てた。だが、あのくそヤローには墓なんて必要ない。
骨をドブ川に投げ捨てたよ。
クズにはクズな場所で眠ってりゃいいんだ」

「…お姉ちゃんのお墓あるの?」

「ある。死ぬ前に場所を教えてやるよ」

オレはメモ帳に鴨志田の墓がある寺の住所を書いた。

「オレを刺して、その後姉ちゃんの墓前で報告してやれ。人殺しの弟を消してやった、と」

ナツは躊躇してるのか、まだオレを刺そうとしない。

「死んで楽になりたいって言ったよね?死んだら楽になるの、ねぇ」

物凄い形相でオレを睨み付けた。

「うん。もうこの世に未練も何もない。だから死んで楽になるんだよ」

ナツは持っていた包丁をポイっと放り投げた。

「…?」

「…だったら。だったら生きて苦しめ!死ぬのが楽ならば、生きて苦しむのよ!生き地獄になりなさい!」

…あぁ、死ぬ事すら許されないのか…

死が幸せだと思っていたオレはまた絶望の淵に堕ちていくのか…

まだ苦しめって事なのだろう。

「ここから抜け出そうだなんて、ムシが良すぎる!ここで、この部屋でずーっと苦しめ!一生苦しめ!それが私の答えよ!」

…そうだよな。今ここでオレを刺し殺しても、ナツは殺人罪で捕まるだけだ。

オレごときのヤツを殺す代わりにムショ行きなんて気の毒だしな。

これも天罰なのか、オレは生きる希望を失ったまま、生き続けなきゃならなくなった。

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