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第178章 いつの間に殺したんだ？

ソンヒョクは達也の言葉が聞こえているのかいないのか、何も言わずこの繁華街をスタスタと歩いているだけ。

ごま油やニンニクの匂いがする独特のコリアンタウン、この中に一体何人の日本人がいて、何人の在日コリアンがいるのだろう？

端から見ても達也には区別できない。
肌の色、体型、ほとんど変わりは無い。

ただ国籍が違うというだけで、生活環境がガラリと変わる…

(たかだかそれっぽっちで待遇が違うのか…イヤな気分だな)

するとソンヒョクは、達也の右前に歩いていたが、即座に反対側に移った。
すると前を歩いている男性がソンヒョクと肩がぶつかり、ソンヒョクは

「おっと失礼…」

と日本語で謝り、前を通りすぎた。

その数秒後、後方から何やら騒がしい声が聞こえた。

「おい、大丈夫か、しっかりしろ！」

「誰か救急車、救急車を呼んでくれ！」

達也が振り返ると、先程ソンヒョクと肩がぶつかった男性が倒れていた…

「おい、呼吸してないぞ！」

「キャ～っ！」

「急に倒れたって、心臓発作か何かか？」

周囲は騒然とした。

「뒤를 돌아보지 않는다 (後ろを振り向くな)」

ソンヒョクは達也にボソッと告げ、そのまま振り向かずに前を歩いた…

(まさか、すれ違いざまに？)

そんなはずはない！ソンヒョクはずっとコートのポケットに手を入れてた。

それなのにどうやって人が殺せるんだ？

だが、あの男はソンヒョクとスレ違った直後に倒れた。

しかもソンヒョクはその直前に達也の反対側に歩を移した。

「이것이 살인 방법이다(これが殺人術だ)」

(何が？何が殺人術だ？一体手を出さないでどうやって殺したというんだ？)

この素早い殺人術に達也は背筋が凍った…

「達也、コリアンタウンを出てすぐ近くに定食屋があるから入ろう」

急に日本語に変わり、ソンヒョクは馴染みの定食屋へと向かった。

(コイツ、忍者かよ？)

物音すら立てずに人を殺める…まさに忍の様な男だ。