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快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体
第4章 母という存在
あの日以来、母親はオレを溺愛するようになった。

母親が求めてきても、オレは拒む事はしなかった。
だが、オレから母親を求める事は一切しなかった。

母親からしてみれば、オレは大事な息子であると同時に性の玩具という扱いに過ぎなかった。

そして母親と過ごす時間が多くなった。それまで一切家事をしなかった母親が掃除、洗濯、炊事までやるようになった。

夜の店は他の人に任せ、たまに顔を出す程度になった為、母親は一日中家にいる機会が多くなっていた。

母親に聞きたいことは山ほどあった。別れた父親と兄は今、どこで何をしているのかという事、何故別れるときに兄じゃなく、オレを引き取ったのかという事、数え上げれはキリがないが、この2つだけは知りたかった。


母親がいうには、父親と兄は都心から離れた郊外で暮らし、兄は成績優秀で来年は有名大学を受けるという事らしい。

そして、何故オレだけを引き取ったのかという理由は、オレは父親と母親の間に生まれた子供ではないという事らしい。

では父親は誰なのか?問い詰めても中々返事が返ってこなかった。

誰の息子かわからないオレは一体何者なのか?答えをはぐらかす母親に業を煮やしたオレは父親探しに出るといって荷物をまとめてこの家を出ようとした。


しかし母親に止められ、ずっとここにいて欲しいと懇願された。じゃあ、父親は一体だれなんだ?

それぐらい知る権利はあるだろうと問い詰めた。
観念した母親は、パトロンと喚ばれた男との間に生まれた子供みたいだ。
確かにおかしいとおもうフシはあった。

それはオレだけが左利きだという事だからだ。

父親も兄も母親も右利きなのに対し、オレだけが左利きなのであるからだ。左利きとは隔世遺伝にもなるのだが、どちらの祖父母にも左利きはいない。

ではオレのホントの父親は誰なのだろうか?
母親ははっきりと言わなかったが、パトロンがオレの父親なんじゃないか、と思う。

そのパトロンはオレが中3に上がって間もなく病に倒れ、この世を去った。
パトロンには身寄りがなく、全財産は母親が受け継ぐ事となり、ほんの少し前までオンボロアパートに住んでいたオレたちが、オートロックのマンションに住むようになったほどの遺産を受け継いだに違いない。

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