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第8章 悪魔降臨 ―それとも救世主? ―

床に打ち付けた躯の痛み…と言うよりは、やばいシチュエーションに暫らく互いに声が出なかった。

ドジな自分を殴り飛ばしたい気持ちとは別に、己の奥深くに焦がれるような気持ちがあることに動揺する。

知りたくない気持ち。

それは、今まで故意に向き合うことを拒否してきた己のこころだった。それ以上わかりたくない…。

耿輔に組み敷かれた俺は、目を逸らして現実から逃れることに必死になった。胸の鼓動が早鐘を刻む。

耿輔に知られてしまう…

息詰まる沈黙を破って、先に口を開いたのは耿輔だった。

「モトミ…大丈夫、痛くないか?どこかぶつけなかった?こんなフラフラになるまで呑むなんてどうかしてる」
 
宥めるように労(いたわ)るように、髪が優しく梳(すかれる。それは、まるで頑なな俺の心を溶かすよう。

先程のキスとは違った甘いキスが俺の耳朶を擽(くすぐ)った。

耿輔の優しさに俺の心が解れていく。

酔った思考はメチャクチャで、”このまま耿輔に牽かれていっても良いかも…”なんて馬鹿なコトを考え始める。

だけど、状況は俺の想像を遙かに超える妖しい方向へと進んでいた。
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