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ファニーキンキー
第1章 それは発見


この無愛想男、上級生や下級生からもお声がかかって、しょっちゅう彼女が代わってるって噂は有名な話。

周りからイケメンって騒がれるレベルの顔をしていると客観的に思ったことはあるけど、顔だけ良くても興味は持てない。

ふと、恵衣子が放った言葉が浮き出される。


“あいつ、絶対Sだよね”


突然、その言葉にひっかかり、あたしは居ても立ってもいられなくなった。

トイレに行ってくると断りを入れ、二人から離れ…



「翔太郎!」

階段で階下に向かう途中の姿を見つけて呼びとめる。

「あ?」

振り向いた翔太郎(しょうたろう)のシャープなあごに手を伸ばし、指を添えた。血色の良い唇は下唇がぷっくりとし、口角に窪みが出来る。

段差のせいで背が高くなったあたしは、まるで上からキスをするかのように、あごを少し持ちあげる。

「…なに?」

不機嫌そうに視線をはずし言葉を続ける。

「いきなり呼び捨てはやめろよ」


こいつ…Sじゃない。

うっかりニンマリ笑いそうになるのを堪えながら、手を離す。

「あたし、翔太郎のこと好きになっちゃった。彼氏になって欲しいんだけど?」

階段の途中で、突然、突拍子もないことを口にした。

「………」

「ダメそうだったらすぐ別れればいいし。いいよね?」

「…いいけど」

「じゃあ、翔太郎って呼ぶね」

ああ…顔が赤くなる人なんだ、クスっ。

長い前髪の奥から覗く瞳を捉えニヤリと笑った───。

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