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空、夕暮れ
第1章 声
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「 香澄。」
そう名前を呼んだのは私の彼氏のタク。
彼も目がクリクリとして可愛らしい顔付きの弟タイプの男子高校生だ。
「 明日何か予定ある? 」
「 明日 ... 」
専門学生の生活スケジュールは基本多忙と言っていいレベルだろう。あまり拓との時間を過ごせない日々が続いては居た。
ふと予定を考えていると、同じ学校のスキニー君(名前が思い出せない為)が立ち上がり、お会計をしにレジへ向かって来た。
私が慌ててレジの方へと向かうと、スキニー君が今にも吹き出しそうな表情で私に視線を向ける。
「 あっ、ありがとうございます。」
いつも通りのレジ作業。スキニー君の表情に動揺しながらも伝票を受け取り金額を打ち込む。
「 お会計は420円でございます。」
いつも、彼が注文するブレンドコーヒー。そしていつも彼の財布から出てくるのは…
「 ……ごひゃくえん。」
「 …は? 」
彼は毎回五百円玉でお会計を済ませる。そんなのも特徴的でもう身体に、頭に染み込んでいた。その染み込んでいたものが今、
「 … あっ… 」
言葉として口から発せられてしまった。
- 恥ずかしっ ……! -
彼にも 『 は? 』なんて言葉をかけられてしまった。むしろちゃんと聞く彼の言葉がそんな言葉だなんて。
「 もっ…申し訳ありませんっ… 」
顔が段々と熱くなるのがわかる。
佳奈さんや拓の視線も此方に向けられているのが痛い程にわかる。
慌てて彼の財布から出された五百円玉をレジに入れお釣りを取り出す。その間、スキニー君はじっと私の手先を見つめる。時折、今にも笑い吹き出すかのような表情で私の顔にも視線を向ける。
「 はっ… 八十円のお返しです。」
視線を向けられる緊張と共に、泣きそうな声になってしまう。
私は幼い頃からそうだ。少しの何気ない緊張で、声や体の震えが止まらなくなり、半泣きのような表情になる。
お釣りを彼の掌の上に乗せる。
と、同時に彼が再び口を開いた。
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