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第32章 最高の名前
アイルは…気が重そうな顔で
ソウタさん宅に入ってきた。




『アイル・・・そこ座れ…』



ソウタさんがオレの隣を指して
アイルを座らせる。





『何の話か・・・・・わかってるな?アイル…』





冷静に…穏やかに話すソウタさんだが

オレと話してる時から

ずっと険しい顔をしている。





・・・チョット・・・・・嫌な予感。







それに待ったをかけるように

オレは隣に座ったアイルに声をかけた。






『あのな?・・・アイル

前にも話したけど・・・一度ちゃんと…』





『・・・・・・・・いい』






オレの方を見ず、うつむいたまま

弱々しくアイルがつぶやいた。






『アイル・・・』




『その話なら

いいって・・・言ったじゃない』






変わらずの一点張りにオレは即
かける言葉がなくなってしまう。




ゴホン…。





見かねたソウタさんが
咳払いをして話はじめた。





『アイル…大事な話だ。

ちゃんとしなければいけない
大事な話だから呼んだんだ

・・・アイル?』





『・・・・・』




アイルはオレとも
ソウタさんとも目を合わせず
うつむいて黙っていた。






『アイル・・・人が話してるんだ

そういう態度は、やめなさい』







アイルが少し姿勢を正して

僅かに顔を上げた。






『アイル…お前~…

この先の事も考え始めたんじゃねぇのか?

お前とリョウキの・・・。』




『・・・・・』





『そういう事ならな

するべき事は・・・ちゃんとしろ?』





『……うん』






ようやく……なんとか

口を開いたアイルだが


うんざりとした、と言うか

殻に閉じこもるように暗い表情をしていた。






『ご両親の事だけどな…』




ピク…っ



ソウタさんの一言で
アイルの肩が震えたのを
オレは見逃さなかった。



そして



『アイル・・・

お父さんとお母さんに…連絡しなさい

それで、お前からちゃんと報告なり

お話をしなさい』




ソウタさんが
核心部に触れた・・・その時







アイルの中で何かが・・・崩れる

そんな音がしたような気がした






オレの不穏な予感はピークに達する
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