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第32章 最高の名前
『それは…いいの。いいんです…』



アイルの声が、ブルッと震えていた。




そして、それに伴って

ヒクヒクと強張るソウタさんの表情に



オレの背中はいつの間にか

冷や汗をかいていた。




『〃いい〃・・・ってのは?

どういうことだ?・・・アイル』






『そんな必要ない・・・』






『だから、その理由はなんだ?』






『私が、いいって言ってるんだから

・・・いいんです』




まるで、らしくない物言いをするアイルに
眉が動くのを抑えて冷静に話すソウタさん

オレは入るに入れず…
冷や冷やしながら様子を見るに留まっていた




『アイル・・・
そりゃぁ〃理由〃になってないだろぉよ?
もうハッキリ言うぞ?

〃恋愛〃するのと
〃家庭を持つ〃事ってぇのはな
まるで別モンなんだ。

ママゴトしてたいならハナシは別だがなァ?
ちがうんだろぉが・・・?』





『・・・・・・』





『アイルいいかぁ?
男と女が・・・一緒になって
所帯を作るのになァ

自分らが・・・
お前ら〃二人が良ければそれでいい〃
なんて事はあり得ねぇんだぞ?

ましてや、アイル…
お前が良ければそれでいいなんてぇのはな
通らねえハナシだ』






『・・・』




『アイル・・・どうして
~まずリョウキと
ちゃんと話さねぇんだァ?

まぁ・・・いい。

お前~…何が
そう…お前をそうさせるんだァ?

~ワケを…話してくんねぇかぁ?
ちゃんとした〃ワケ〃をよ。

お前・・・そんな
いい加減なことが出来るヤツじゃ
ねぇだろぉが…

お前にはお前の気持ちがあるだろぉよ?
俺はそれを否定する気は全くねぇさ…

ただ、それならな?
その理由をちゃんと教えてくれって
そう言ってるだけだ。

リョウキに…俺にもわかるようにな?
納得のいく理由を聞かせてくれ?
お前の言葉で…ゆっくりでいいからよォ

お前にとって…それがどうにも
不安で苦しいのなら
俺は必ず力になるから…』



恐る恐る見てたけど
完璧すぎるソウタさんの言葉だった。





アイルは・・・なんて言うだろう。
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