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囚われの天使たち
第2章 支配

奈津子の頭を撫でていた男の手は、奈津子の頬へ移動し、高調した頬を伝う涙を丁寧にぬぐった。

「じゃあ、次の命令をするよ。気をつけ」

「は、はい……」

奈津子は返事をして、両足を揃えて立った。ただ、体の震えは止まらない。それに背中も少し丸まっっている。萎縮しているせいだろう、と男は考える。

「だめだめ。ちゃんと背筋を伸ばして、両手は体の脇につけるんだ」

奈津子は怯えた目で男を見あげる。

「返事はどうした!」

男の怒鳴り声に、奈津子は体をびくりとさせて、

「は、はい」

とようやく返事をした。しかし体勢は変わらない。

「言うとおりにしろ!」

ばちん、という音とともに、また奈津子の頭がはじかれる。

「痛いいい!」

男がまた奈津子の頭をぶったのだ。

「はやく気をつけをしなさい」

「は、はい! すみませんでした」

奈津子は怯え声でそう言って、言われた通りにした。背筋を伸ばし、両手を体の脇につける。

「よしよし」

男はふたたび、奈津子の頭を優しく撫でた。

「出来るようになってきたな。じゃあ次の命令だ。服を脱ぎなさい」

「え……」

奈津子は目をぱちくりとさせて男を見あげた。

「ほら、どうした。服を脱ぎなさい」

「それは、でも……」

ばちん。頬をぶつ。

「きゃあ!」

「もっと殴られたいか」

「ごめんなさい。ごめんなさい」

奈津子は必死に許しを乞う。

「早く、服を脱ぎなさい」

「は、はい」

かすれた声で奈津子は返事をした。
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