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第1章 序章

「武藤さん、初任者研修の実施などについてお話しするので、ついてきて」

と、紗英は未知子に言うと、歩き始めました。

話をする場所は二階の打ち合わせ室でした。

「『武藤さん』と呼ぶのは固いので、『未知子』と呼ぶわね」

と、宣言すると、紗英は、

「あ、わたしのことも二人で話するときは『紗英』と呼んで。年上なんだから。呼び捨てで構わないわよ」

と、またも宣言する紗英。基本的に紗英は人の同意を必要とはしないタイプ。

「え・・・と、何を伝えるべきか・・・」

と、少し考えてから、

「そうそう、未知子ってチャレンジャーだね。その歳で新入社員の選考に応募するんだから。でも、そうか、大学を卒業して就職だから大卒の採用試験で間違いではないのかも。。。ま、とはいってもどこでも浮いてたんじゃない？」

と、あっけらかんと言う紗英。

「そうだったかもしれません」

と、未知子が当惑しながら答えると、

「だと思うわよ。38歳の新卒なんて普通はありえないから。だいたい、38歳で住宅メーカーで働くとなると、だいたいはパートかアルバイトだから、正社員の採用試験なんて受けないもの」

と、呆れた風に言う紗英。

「嘘だと思うなら、他社の展示場にいる同じ年代のスタッフに聞いてみるといいわ。みんなパートって答えるはずだから」

「子育てしながらパートで働いていた割には世間知らずね」

「ま、わたしはあなたが気に入ったから口添えしたの。少しは恩義に感じてよね」

と、笑う紗英。