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淫の館
第3章 目覚め

「そんな…酷い。」

「酷いのは貴女じゃないでしょうか。
どんな顔をして家に帰るんですか?
よき妻、優しい母の仮面をつけて、ご主人やお子さんと顔を合わせるんでしょうか?
その方がよっぽど残酷でしょう。

貴重品はマンションのエントランスのポストに入れて置きました。
あと、離婚届も貴女の部分を記載して…
此処への足掛かりになるものもなく、メッセージも残してません。
しばらくは貴女を探すかもしれませんが、それも時が解決するでしょう。

貴女が帰る資格があるというなら、それを私たちに示して、自力でここから去ればいいのです。

さあ、ご覧なさい。
磔拷問を受けている罪人のような姿を。」

ベッドの足元側にある襖が開かれ、大きな鏡が現れる。
そこに、両手を真一文字に広げ、太い竹に縄でぐるぐる巻きにされ、白い着物をきた罪人が映っていた。

竹を固定する為か、肩から胸にばってんに縄で締められ、まさに十字に磔られた罪人だった。

「この館に居れば、淫欲が清いものとされ、世俗のことが穢れとされる。
『淫の館』、貴女はここで穢れを落として清く生きるのです。」


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