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銀木犀の香る寝屋であなたと
第3章 婚姻
 気を失うように眠りに落ちた珠子を見ながら情交の後始末をする。
白濁液に一筋の朱が混じっている。(純潔か……)

 彼女が意識を失う前に『兄さまっ』と小さく叫ぶのが聞こえた。
おそらく本人に自覚がなかったのだろうが、この契りで想いが表面化しているかもしれないと文弘は思った。
 彼女を心から愛せはしないだろうが大事にはできると思う。

 深窓の令嬢と名高い子女でも夜会で会うとそうではない。
頬を染め初めて恋をするようなそぶりを見せ、文弘に誘惑されたかのような態度を取り簡単に身体を開く。
恐らく珠子より清い娘などそうそう居ないであろう。

 身体を拭きネグリジェのボタンを留めてやり、そっと上を向かせて寝かせてやった。文弘も汗を拭ききちんとパジャマを着て、となりに横たわる。

「おやすみ」

 無垢な寝息を立てる珠子を見ながら、共犯者を得たような気分で文弘も目を閉じた。
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