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空蝉
第4章 月の下



満ちゆく月に 導かれ

この身にひそむ 愛欲は

水の底より 湧きいでる 気泡のように ふつふつと

弾けて、肌を 震わせる

気づけば、白き 羽二重の 裾を濡らして しまうほど

じれて、こがれて 彼の人を 待つ苦しさに 身を捩り

一期一会の 恋なれど・・・

盛り短き 花なれれば・・・

寄せても引かぬ 愛欲の 波に、この身を たゆたえて

嫌なおとこの 誘いさえ 受けてみようと 思わせる



月のあかりの 静かさは 満たせぬ夜を 浮きたたせ

眠れずに、打つ 寝がえりに

乱れる絹は 彼の人に 抱かれたあとを 偲ばせる

けれど、差し込む 月あかり

鏡に浮かぶ 褥には 乱れそこねし 花ひとつ

さびしく揺れて いるばかり

散らす花なら どの指も しょせん、同じ・・・と 月の下

嫌なおとこの 解く帯に ひと夜かぎりの 身をあずけ 

醒めぬ火照りを 冷ましてと 夜の明けるまで 泣き狂う





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