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空蝉
第5章 花狂い



さくら、咲く夜は 艶めいて

温んだ風に 弄られる 肌も、たやすく さざめいて

鎮めるすべを 知らぬ、まま

人のからだの 恋しさに

結ばぬはずの 契りさえ ひと夜かぎりに 求めます


暗き褥に 身を捩り

真白き肌を 染めて咲く 花より紅き やわ肌を

貪る人の 愛しくて

ひとときなれど かりそめの 恋を覚えて 乱れます



さくら咲く夜の 望月は

いにしえ人も 死を望む 妖しき夢に 満たされて

花の下にて 死にも似た

彼岸の端の 悦楽を 求め、あまたの 人たちに

抱かれる夢を 描きます


わたしの肉の 悦びの すべての口を ふさがれて

注ぎこまれる 悦楽の 果てなき責めに 気狂いし

此岸の端を 見失う そんな、明日を 夢みます




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