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縣男爵の憂鬱 〜 暁の星と月 番外編〜
第1章 縣男爵の憂鬱
礼也はボクシングのレフリーよろしく、引き剥がさんばかりに間に割って入る。
二人のややひんやりした眼差しが礼也に容赦なく刺さる。
礼也は自分の大人気のなさを一瞬恥じ入り
「…そうか…つまり二人は相思相愛なわけだな」
と冷静に判断を下した。
…月城が誘惑した訳でもなく、暁が好きになり告白し、月城は執事としての分を弁え、一度は暁を拒んだ。
そして暁が怪我を負い、傷ついているところに駆けつけ、真実の愛を告白し二人は結ばれた。
…それならば、最早自分がとやかく言うことではなかろう。
礼也は渋々ではあるが、二人の仲を認めざるを得なかった。
「はい。そうです」
二人は異口同音に答えた。
折角、礼也がレフリーのように二人を引き離したのに、しっかり手を握りしめ合っている。
礼也はふっと溜息を吐いた。
「…そうか。それなら私が言うことは何もない」
そして、不意に居住まいを正すと月城に向かい、深々と頭を下げた。
「月城くん、暁をよろしく頼む」
月城ははっと目を見張り、暁は息を呑んだ。
礼也はまだ頭を下げたままだ。
「暁は私のたった1人の大切な弟だ。男同士の恋愛は困難なこともあるだろう。辛い目に遭うこともあるかも知れない。だが、どんな時も暁のそばにいて、暁を支えてやって欲しい。私は暁が幸せになってくれたらそれでいい。二人で力を合わせて幸せになってくれ」
「…兄さん!」
暁の黒い瞳から涙が溢れ落ちる。
月城は表情を引き締め、静かに告げる。
「頭を上げて下さい。縣様」
礼也はゆっくりと頭を上げる。
月城はいつもの冷静さをかなぐり捨てるかのように猛然と頭を下げた。
「縣様!暁様は、私が必ず命に代えてもお護りいたします!私の生涯を掛けて、暁様がお幸せになっていただけるよう、全力を尽くします!ですから…暁様を…私に下さい‼︎」
「…へ⁈」
暁がおかしな声を上げる。
「…ちょっ…月城…!」
おろおろする暁をよそに、月城は頭を下げ続ける。
「暁様を私に下さい!お願いします!」
礼也は、黙って暁の華奢な手と月城の大きな美しい手を重ね合わせた。
「…幸せにしてやってくれ」
そして、いつもの余裕に満ちた大人の魅力溢れた笑みで目配せをする。
「幸せにできなかったら、暁は返してもらうからな」
「…兄さん…!」
「…幸せになりなさい」
泣きじゃくる暁の髪をくしゃくしゃと掻き回し、笑った。
二人のややひんやりした眼差しが礼也に容赦なく刺さる。
礼也は自分の大人気のなさを一瞬恥じ入り
「…そうか…つまり二人は相思相愛なわけだな」
と冷静に判断を下した。
…月城が誘惑した訳でもなく、暁が好きになり告白し、月城は執事としての分を弁え、一度は暁を拒んだ。
そして暁が怪我を負い、傷ついているところに駆けつけ、真実の愛を告白し二人は結ばれた。
…それならば、最早自分がとやかく言うことではなかろう。
礼也は渋々ではあるが、二人の仲を認めざるを得なかった。
「はい。そうです」
二人は異口同音に答えた。
折角、礼也がレフリーのように二人を引き離したのに、しっかり手を握りしめ合っている。
礼也はふっと溜息を吐いた。
「…そうか。それなら私が言うことは何もない」
そして、不意に居住まいを正すと月城に向かい、深々と頭を下げた。
「月城くん、暁をよろしく頼む」
月城ははっと目を見張り、暁は息を呑んだ。
礼也はまだ頭を下げたままだ。
「暁は私のたった1人の大切な弟だ。男同士の恋愛は困難なこともあるだろう。辛い目に遭うこともあるかも知れない。だが、どんな時も暁のそばにいて、暁を支えてやって欲しい。私は暁が幸せになってくれたらそれでいい。二人で力を合わせて幸せになってくれ」
「…兄さん!」
暁の黒い瞳から涙が溢れ落ちる。
月城は表情を引き締め、静かに告げる。
「頭を上げて下さい。縣様」
礼也はゆっくりと頭を上げる。
月城はいつもの冷静さをかなぐり捨てるかのように猛然と頭を下げた。
「縣様!暁様は、私が必ず命に代えてもお護りいたします!私の生涯を掛けて、暁様がお幸せになっていただけるよう、全力を尽くします!ですから…暁様を…私に下さい‼︎」
「…へ⁈」
暁がおかしな声を上げる。
「…ちょっ…月城…!」
おろおろする暁をよそに、月城は頭を下げ続ける。
「暁様を私に下さい!お願いします!」
礼也は、黙って暁の華奢な手と月城の大きな美しい手を重ね合わせた。
「…幸せにしてやってくれ」
そして、いつもの余裕に満ちた大人の魅力溢れた笑みで目配せをする。
「幸せにできなかったら、暁は返してもらうからな」
「…兄さん…!」
「…幸せになりなさい」
泣きじゃくる暁の髪をくしゃくしゃと掻き回し、笑った。