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縣男爵の憂鬱 〜 暁の星と月 番外編〜
第1章 縣男爵の憂鬱
…嫁…。
確かにそうだ。暁は嫁に出したようなものだ。
実に不本意なのだが、そうなのだ。

…だが問題は、それだけではない。
礼也は執務室のデスクに頬杖をつき、眉根を寄せる。
…どこに嫁に出したのか、全く分からないことなのだ!

暁に家を出たいと言われ、仰天した礼也は問い詰めた。
なぜ⁈家が不満なのか⁈光と上手くいっていないのか⁈屋敷の使用人と何かあったのか⁈…それとも私が嫌なのか⁈
…と。

…それに対しての暁の答えは、礼也の想像の遥か上をゆくものだった。

「…僕は同性愛者なのです。男性しか愛せないのです…」
…と。
そして…
「…兄さんが好きでした…」
と、礼也にそっとキスをした。
驚いたが、少しも嫌な気持ちはしなかった。
それより、その後に暁が訥々と話し始めた恋愛経験の話が胸に響いた。
…自分は暁を誰よりも理解していたつもりだった。
しかし何も分かってはいなかった。
何より自分の鈍感さと無神経さが、暁をどれだけ傷つけていたのだろうかと自己嫌悪に陥った。
「…僕には愛する人がいます。その人も僕を愛してくれています。その人と一緒に生きて行きたいのです…」
暁はそう訴えた。

礼也は暁を抱きしめ、今も変わらずに愛していると伝え、全てを受け入れた。
…家を出ることも、同性愛者だということも、愛する人がいるということも…。

…しかし…。

日が経つにつれ、礼也の中で一つの疑問が湧き上がり、それが気になって仕方なくなったのだ。
…それは…
「…相手の男は誰なのだ⁈」
…ということであった。

暁は
「その人に迷惑がかかるから、まだ言えない」
と言った。

…と言うことは…?
「…私が知る人物なのか…?」
「…へ?」
礼也にお茶を出しかけた玉木が珍妙な顔をした。
礼也は玉木をじっと見た。
「…な、なんですか?」
…玉木は六十絡みの禿頭の男だ。
顔は七福神の恵比寿様にそっくりだ。
「…違うな…」
礼也はフッと苦笑する。
「な、なんですかい?社長…」
玉木が不気味そうに礼也から後ずさる。

「…では、他には…」
暁をいつも取り巻いていると7人の小人ならぬ7人の従業員の顔を次々に思い浮かべる。
「…ないな…」
礼也はあっさりと首を振る。
「…暁は面喰いな筈だ。…私が好きだったのだからな」
今度は急に、にやにやしだした礼也を玉木は敢えて目を合わさずに、そっと執務室を出た。


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